

患者からカルテの開示を求められたとき、歯科医院はどう対応すればよいですか?
結論
患者さん本人からカルテ(診療録)やレントゲンなどの開示を求められたら、原則として応じなければなりません。理由を聞いて開示の条件にしたり、紛争になりそうだという理由だけで断ったりすることはできません。 その場で渡す必要まではありませんが、申請書を出していただき、本人確認をしたうえで、遅滞なく(通常は1週間程度を目安に)、記録を一切書き換えずに、求められた方法で開示してください。
根拠
- 個人情報保護法:医療機関は、本人から保有個人データの開示を求められたときは、原則として遅滞なく開示しなければなりません(個人情報保護法33条)。開示の方法は、本人が電子データか書面かを指定できます。
- 断れる場合:本人または第三者の生命・身体・財産などを害するおそれがある場合、業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合などに限られます(同条2項)。断るときは、その旨を本人に通知しなければならず(同条3項)、理由も説明するよう努めます(同法36条)。
- 手数料:手数料を取ることはできますが、実費を勘案して合理的な範囲の額にする必要があります(同法38条)。法外な額は、事実上の開示拒否と受け取られます。
- 厚生労働省の指針:「診療情報の提供等に関する指針」は、開示を求める理由の記載を求めないこと、亡くなった患者さんについては一定の範囲の遺族にも開示することなどを定めています。
医院での対応
- 申請書を出していただく:何を、どの方法(閲覧・コピー・電子データ)で求めるのかを書面で確認します。
- 本人確認:本人であることを確認します。代理人(家族・弁護士など)の場合は、委任状などで代理の権限を確認します。
- そのまま開示する:診療録、レントゲン・CT、口腔内写真、技工指示書など、求められたものを、追記や修正をせずに、そのままの状態でコピーします。原本は渡しません(貸し出しもしません)。開示の前に書き足すと、改ざんを疑われる最大の原因になります。
- 記録を残す:請求を受けた日、開示した日、開示した範囲、受け取った手数料を記録します。
- 紛争が背景にある場合:開示の請求は、訴えの準備であることもあります。開示は原則どおり行い、並行して、患者から「医療ミスだ」と言われたときの手順で準備を進めてください。
開示を断ると、どうなるか
- 正当な理由なく断ると、慰謝料の支払いを命じられることがあります。
- 患者さんが裁判所に「証拠保全」を申し立て、ある日突然、裁判所の執行官が決定書を持って来院し、1〜2時間後にはカルテなどの確認が始まることがあります。その場合も、記録をそのまま示すことが大切です。
- 裁判になれば、開示を拒んだこと自体が、記録の隠ぺいや改ざんを疑わせる事情になります。
日頃からの備え
- 手数料の額と開示の手続を決め、院内やホームページに載せておく。
- 開示されることを前提に、自費診療の分も含めて、診療録を正確に書いておく。
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執筆:小畑 真(弁護士・歯科医師、弁護士法人 小畑法律事務所 代表)
※ このページは一般的な考え方の説明です。実際の対応は、個別の事情によって異なります。








