

カルテに書き忘れた説明を、あとから書き足してもよいですか?
結論
書き足すこと自体は問題ありません。ただし、「あとから書き足したこと」と「書き足した日」が分かる形にし、もとの記載は消さないでください。 もとの記載を消したり、当日に書いたように見せかけたりすると、改ざんと受け取られ、カルテ全体の信用を失います。紛争になってからは、カルテに書き足さず、別の書面に残してください。
根拠
- 記載の義務:歯科医師は、診療をしたときは遅滞なく、診療に関する事項を診療録に記載しなければなりません(歯科医師法23条1項)。記載する事項は、患者さんの住所・氏名・性別・年齢、病名と主な症状、治療方法、診療の年月日です(歯科医師法施行規則22条)。保険診療のルールではなく法律上の義務なので、自費診療でも同じです。書き忘れに気づいたときに追記することは、この義務にかなう行為です。
- 電子カルテの真正性:厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」は、電子カルテについて、書き換えや消去を防ぎ、追記・訂正のたびに、誰がいつ行ったかが分かるようにすることを求めています。
- 裁判での扱い:裁判では、カルテは診療の経過を示す最も重要な証拠で、改ざんや矛盾がない限り、書かれた内容には高い信用性が認められます。逆に、書いていないことは「説明していない」「行っていない」と評価されやすくなります。不自然な書き換えが見つかると、その部分だけでなく、カルテ全体の信用性が疑われます。
正しい追記の方法
- 追記した日を書く:「〇年〇月〇日追記」と、書き足した日付を入れます。
- もとの記載を残す:紙のカルテは、修正液や塗りつぶしを使わず、二重線で消して読める状態にします。電子カルテは、修正の履歴が残る方法で入力します。
- 内容は事実だけ:説明した内容、使った資料、患者さんの返答など、記憶にある事実を書きます。推測や、自分に都合のよい評価は書きません。
- ほかの資料も残す:説明に使った書面、同意書、技工指示書なども、あわせて保管します。
書ききれない説明は、書面で補う
- 説明のすべてをカルテに書くのは現実的ではありません。治療ごとの説明書・同意書を使い、カルテには「説明書〇〇を用いて説明」と書いておく方法が有効です(治療前の説明と同意書を参照)。
紛争になってからの追記
- 患者さんから苦情や開示請求があったあとに書き足すと、内容が正しくても、「紛争に備えて書いたもの」と見られやすくなります。
- その段階で書き足したいことがある場合は、カルテには手を加えず、別の書面(経過のメモ)として、作成日を入れて残すことをおすすめします。
関連するページ
執筆:小畑 真(弁護士・歯科医師、弁護士法人 小畑法律事務所 代表)
※ このページは一般的な考え方の説明です。実際の対応は、個別の事情によって異なります。








