

患者とのトラブル(クレーム・返金・未払い・迷惑行為)
結論:患者さんからの不満や要求は、まず事実(診療録・説明の記録・やりとり)を確かめ、その場で約束や謝罪の文書を出さずに、医院としての方針を決めてから回答することが大切です。 初めの対応を誤ると、本来は小さかった不満が、返金や損害賠償の請求、口コミへの書き込みに広がることがあります。
よくあるご相談
- 治療の結果に納得できないと言われ、やり直しや返金を求められている
- 自費診療(インプラント・矯正・審美など)を途中でやめたいので、治療費を返してほしいと言われた
- 治療費を払ってもらえない
- 受付で大声を出す、長時間居座る、スタッフに暴言を吐く患者さんがいる
- 診療録(カルテ)のコピーを出すよう求められた
- 口コミサイトやSNSに事実と違う書き込みをされた
法的な考え方
1.診療契約で何を約束したか
歯科医院と患者さんの間の診療契約は、一般に「結果の保証」ではなく、その時点の医療水準に沿った診療を行うことを約束するものと考えられています。結果が期待どおりでなかったことだけで、ただちに医院の責任になるわけではありません。
一方で、治療前の説明が足りなかったことが問題とされる例は少なくありません。どのような説明をし、患者さんが何に同意したのかを、記録で示せるかが重要です。
2.自費診療の返金
治療を途中でやめる場合の精算は、まず契約書・同意書・料金表に何と書いてあるかで決まります。書面がない、または内容があいまいな場合は、実際に行った治療の範囲や、かかった費用をもとに話し合うことになります。
返金の約束をその場でしないこと、返金する場合も、合意の内容を書面に残すことが大切です。
3.診療録の開示
患者さん本人から診療録の開示を求められたときは、個人情報保護法と厚生労働省の「診療情報の提供等に関する指針」に沿って対応します。原則として開示に応じる必要があります。なお、歯科医師法により、診療録は5年間保存しなければなりません。
4.迷惑行為と診療の継続
歯科医師には、診療の求めがあったときに正当な理由なく拒んではならない義務(応招義務、歯科医師法19条)があります。ただし、厚生労働省の通知(令和元年12月25日)は、患者さんの迷惑行為などで信頼関係が失われた場合には、新たな診療を行わないことが正当化されうるとしています。
暴言・威圧の内容と日時を記録し、ほかの医療機関を紹介するなど、手順を踏んで対応することが大切です。
5.口コミ・SNSの書き込み
事実と違い、医院の社会的評価を下げる書き込みは、サイトへの削除依頼や、発信者の特定の手続の対象になりうるものがあります。ただし、患者さんの感想にすぎないものは対象にならないことも多く、反論の書き込みが別のトラブルを生むこともあります。
当事務所でできること
- 経過と記録を拝見し、医院としての方針(説明・謝罪・返金・お断り)を一緒に決めます
- 患者さんへの回答書の作成、代理人としての交渉
- 治療費の未払いの請求
- 損害賠償の請求を受けたときの、示談交渉・調停・訴訟の対応
- 口コミの削除依頼、発信者の特定の手続
- トラブルを防ぐための説明書・同意書、院内の対応手順の整備
小畑真は、歯科医師としての臨床経験をもとに、診療の内容を前提にした検討ができます。患者トラブルの予防と対応については、学会・歯科医師会で講演を重ね、日本歯科医師会雑誌などに寄稿しています。
よくある質問
Q.患者さんに「治療ミスだ」と言われたら、すぐに謝ったほうがよいですか?
A.不快な思いをさせたことへのお詫びと、過失を認めることは別です。事実を確かめる前に「医院のミスでした」と認める発言や書面は避け、まず記録を確認してください。
Q.治療費を払わない患者さんの次の予約を断ってもよいですか?
A.未払いだけを理由に、直ちに診療を断れるとは限りません。支払いの状況、督促の経過、ほかの医療機関で診療を受けられるかなどを踏まえて判断します。
執筆:小畑 真(弁護士・歯科医師、弁護士法人 小畑法律事務所 代表)
※ このページは一般的な考え方の説明です。実際の対応は、個別の事情によって異なります。








