

歯科医院で、自費診療の治療費の返金を求められたときはどう対応すればよいですか?
結論
治療を途中でやめる場合、医院は、すでに行った治療の分の費用を受け取ることができ、残りは精算して返すのが原則です。精算の方法は、まず契約書・同意書・料金表の定めによりますが、患者さんに一方的に不利な定めは無効になることがあります。 その場で返金を約束せず、行った治療の範囲と費用を整理してから、書面で回答してください。
根拠
- 診療契約の性質:診療契約は、一般に準委任契約(民法656条)と考えられており、患者さんはいつでも契約を解除できます(民法651条)。
- 途中で終わったときの報酬:委任が途中で終わった場合、医院は、すでに行った分の割合に応じて報酬を請求できます(民法648条3項)。前払いを受けている場合は、残りを返すことになります。
- 消費者契約法:「途中でやめても一切返金しない」といった定めは、医院に生じる平均的な損害を超える部分が無効になったり(消費者契約法9条1項1号)、患者さんの利益を一方的に害するものとして無効になったりすることがあります(同法10条)。
- 特定商取引法:歯のホワイトニングのうち、期間が1か月を超え、金額が5万円を超える契約は、「特定継続的役務(美容医療)」にあたり、クーリング・オフや中途解約のルールが適用されることがあります。
医院での対応
- 事実を整理する:契約書・同意書・料金表、受け取った金額、すでに行った治療の内容(技工物の製作、装置の装着など)を確認します。
- 費用の内訳を示す:行った治療と、そのために医院がすでに負担した費用(技工料など)を、分かる形で示します。
- 書面で回答する:精算の考え方と金額を書面で伝えます。
- 治療結果への不満が理由の場合:返金を求める理由の多くは、治療の結果や医院の対応への不満です。返金だけで終わらず、損害賠償の請求に進むこともあるため、返金の話と、治療に問題があったかどうかの話を分けて考えます。治療に問題がないのに返金に応じる場合は、解決金として扱い、責任を認める表現は避けます。
- 合意書に入れること:精算の対象となる治療の範囲、金額・支払日・支払方法、合意の内容を口外しないこと、「これ以外に請求しない」ことを入れます。
よくある誤解
- マウスピース矯正で、マウスピースを全部渡した場合:渡したことだけで、返金の必要がなくなるわけではありません。行った診療(診査、調整、経過の確認など)の範囲で精算を考えます。
- 患者さんが亡くなった場合:返金の相手は相続人です。返金する金額は、原則として法定相続分に応じて各相続人に分かれます。戸籍で相続人を確かめ、相続人全員の合意書(誰にいくら返すか)を得てから返金するのが安全です。
予防のために
- 自費診療の契約書・同意書に、途中でやめた場合の精算の方法(段階ごとの費用など)を書いておく。
- 段階ごとに支払いを受ける方法(分割前払い)も、精算のトラブルを減らします。
- 「返金しない」という定めは、有効な範囲でも患者さんの不信感を招きます。返金の基準を前もって示すほうが、トラブルを防げます。
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執筆:小畑 真(弁護士・歯科医師、弁護士法人 小畑法律事務所 代表)
※ このページは一般的な考え方の説明です。実際の対応は、個別の事情によって異なります。








