

歯科医院で、治療費を払わない患者にはどう対応すればよいですか?
結論
まずは窓口と電話で支払いを求め、払われなければ書面で督促し、それでも払われない場合は支払督促や少額訴訟などの裁判所の手続を検討します。治療費の請求権は、原則として5年で時効になるため、放置しないことが大切です。 未払いだけを理由に、直ちに次の診療を断れるとは限りません。
根拠
- 時効:2020年4月1日以降に生じた治療費の請求権は、支払いを請求できることを知った時から5年で時効になります(民法166条1項)。それより前に生じたものは、改正前の民法により3年です。請求書を送り続けるだけでは、時効は止まりません(内容証明郵便などで請求すると6か月は時効が完成しませんが、この猶予は1回だけです。民法150条)。患者さんに未払いを認めてもらう(書面にしてもらう)か、裁判所の手続をとる必要があります。
- 窓口負担:保険診療の一部負担金は、保険医療機関が受け取るべきものとされています(保険医療機関及び保険医療養担当規則5条)。未払いを放置したり、受け取らないことにしたりするのは避けてください。
- 応招義務:歯科医師は、正当な理由がなければ診療の求めを拒めません(歯科医師法19条)。厚生労働省の通知(令和元年12月25日)は、過去の治療費の不払いがあっても、それだけで直ちに診療しないことが正当化されるわけではないとしつつ、支払能力があるのに悪意をもって支払わない場合などは、診療しないことが正当化されるとしています。
- 裁判所の手続:支払督促(民事訴訟法382条)は、書類の審査だけで支払いを命じてもらえる手続です。60万円以下の請求は、原則1回の審理で終わる少額訴訟(同法368条)も使えます。
医院での対応
- 窓口での確認:会計時に払えない事情を聞き、支払日を決めて記録します。分割払いにする場合は、支払計画を書面にしておきます。
- 電話・書面での督促:期日を過ぎたら、電話のあとに書面で督促します。何度も払われない場合は、内容証明郵便で請求します。
- 弁護士名での督促・裁判所の手続:弁護士の名前で督促すると、支払われることも少なくありません。それでも払われない場合は、金額や相手の反応に応じて、支払督促・少額訴訟・通常の訴訟を選びます。判決を得ても、差し押さえられるのは患者さん本人の財産だけで、家族の財産からは回収できません(連帯保証人がいる場合や、未成年の患者さんの親が契約の当事者である場合を除きます)。
- 次の予約:未払いの経過(督促の回数、患者さんの説明)を記録し、応招義務の考え方に沿って判断します。急を要する症状がある場合は、診療を優先します。
予防のために
- 自費診療は、段階ごとの前払いにする。
- 初診時に、連絡先と本人確認の情報を正確にいただく。
- 未払いが生じたときの医院の手順(誰が、いつ、どう督促するか)を決めておく。
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執筆:小畑 真(弁護士・歯科医師、弁護士法人 小畑法律事務所 代表)
※ このページは一般的な考え方の説明です。実際の対応は、個別の事情によって異なります。








